UGNADAM

謎のシンドロームがあった。通常2種までであるシンドロームの垣根を乗り越え、複数の、5種も6種ものシンドロームを発症させたオーヴァードの子供達。
研究者たちはその症状を”インフィニティー・コード”と呼び、コードウェル博士の指揮の元、男子はUGN、女子はFHに分けられ、それぞれProject:ADAM、Project:EVEと呼称された。
新たなる人類の可能性と信じられたそれは、やがて行き詰まりを迎える。
未来と言うにはあまりにももろく(通常よりジャーム化の可能性が高い)、広がりを感じさせない。
ただ様々なエフェクトが使えるだけの畸形児ではないのか。
進化の果てか、原始の一か。
やがてそのシンドロームはアダムもイブも飲み込む無限の蛇:ウロボロスの名が与えられるようになる。
そしてそれは捨てられた子供達、UGN-ADAM(ユーグナダム) 対 FH-EVE(ファイブ)の新たなる戦いの幕開けでもあった。


彼はUGN-ADAMの一人として生きてきた。生粋のUGNチルドレンである彼にとってそれは当然であり、他に選びようがない道であった。子供心に実験がつらいと感じたことはあった。だがそれはUGNチルドレンとしての義務であり、オーヴァードとしての責務であると考えていた。
特筆すべきこととしてビサイドの存在があった。
彼の中にあるもう一つの人格。ビサイドは彼にあらゆることを教えてくれた。レネゲイドのコントロールから戦闘、処世術、生活全般まで。
彼は正しい道をつき進んだ。
私立UGN幼稚園から私立UGN小、そして私立UGN中へ。
順風満帆な人生であったといえるだろう。
だがそこに落とし穴があった。
優秀なUGNチルドレンとして生きてきた彼の最初の挫折。
高校受験失敗。
UGN高等学校の試験に落ちたのだ。
原因は不明だ。いや彼にはわかっている。ビサイドの沈黙。突如彼との交信をたったもう一人の自分。それは彼が感じる始めての孤独だったのだ。

そして彼は一般の公立高校へ進むことになる。
戦いもない、危機感もない、平和で楽しい学園生活。オーヴァードでない友人。娯楽という暇つぶし。
それは全てはじめての経験。ゆるい穏やかな時間だけが過ぎていく。
彼は思った。このままではだめになる・・・