三太夫の章

まったく、おひ・・・、和香お嬢様ときたら、すぐに厄介事に首を突っ込みたがる。英傑の使命なのはわかりますが少しはご自分の身分もわきまえていただかないと・・・。

もっとも肝心の盗賊どもは何者かが退治してしまったわけですが、あまり情操教育に良くないものを見せてしまいましたね。さあ、お嬢様帰りましょう。
え、あの笠がどうしましたか? あの字は・・・あれは山郷殿の傘ではありませんか。なぜこんなところに。まさか盗賊を倒したのは・・・。
少しお待ちください、取ってまいります。
おや、なぜ空笠がこんなに重いんでしょう・・・。
う、そういうことでしたか。
この切り口はあの山賊共を切ったのと同じ。まさか山郷殿を倒すほどとは。
ああ、お嬢様。あまり見て気持ちいいものではありませんが、袖触れ合うも他生の縁。丁寧に弔って差し上げましょう・・・。
と・・・。
もしかして生きてらっしゃいます?
なるほど山郷殿はサイボーグでいらっしゃいましたね。まさか首だけでも生存可能だとはおみそれいたしました。

体を取り戻して欲しい? わかりました。微力ながらお手伝いさせていただきます。
犯人に心当たりは?
映像がのこってますか。蘭学で言うところのプロジェクターですね。なつかしい。
この少女ですか。ただの人間にしか見えませんね。他に人影はないようですが・・・。背後からの一撃。油断してましたか。
その娘がお亡くなりになった妹ぎみに似てらしたと。
それは仕方ありませんね。


さて、山郷殿の体は取り戻せたものの・・・。
このような場所に蘭学者はいるわけもなし・・・。
これ以上胴体と離れていては内蔵電池の負荷も限界を超えてしまう・・・。
仕方ありませんね。
二度と使わないと思っていたのですが、「ソモサン」の名が出た以上放っておくわけにはいきませんね。これも運命、いや過去の贖罪でしょうか。
皆様、山郷殿の頭と体をそこの台の上に。
エレキテルとエリクサ、スターダストサンド。月の雫、龍の牙・・・。手持ちの材料では少し足りないですが急場を凌ぐぐらいは出来るでしょう。
お嬢様、実は昔ダーク蘭学に関わっていた時期がありまして。ええ、旦那様に拾われる前の話でございます。この手のことには多少腕に覚えがあるのですよ。まあ、昔取った杵柄ですが、このようなところで再びドリルを手に取る日が来ようとは、人間長生きはしてみるものですね・・・。